寸又峡再び。

 寸又峡と言えば、その筋の人ならすぐ気がつくでしょう。

 とは言っても、鉄として出かけたわけではないですが。とことこさんが勤続15周年お祝いに、お休みを1週間もらうことになったので、どこかに出かけようということになったのです。出かけるなら温暖なところがよいというとことこさんの希望と、あかたんの誕生日も兼ねて、2月5日から7日にかけて、今年も大井川鉄道に出かけたわけです。

 血は争えないというか、あかたんはかなりの鉄道好き。週末は必ずというほど、駅に連れて行かれて電車に乗せられてしまいます。おもちゃもほとんど電車と線路という状態です。前回出かけたときは、途中から一区間だけ、とことこさんとあかたんだけSLに乗せてあげたのですが、今回は始発から終点までみんなで乗ってみることにしました。

 SLは出発がお昼前ぐらいの時間なので、前日から寸又峡に泊まって、次の日に千頭駅まで車で出て、電車で金谷まで出て、SLで戻ってくることにしました。千頭駅でSLに乗るというと、駅員さんが、金谷駅まで行ってしまうよりも、新金谷で降りたほうがよいとおすすめしてくれました。前の日にちょこっと金谷駅の横を通ったのですが、確かに金谷駅はあとからおまけのように作られたような駅で、二両ぐらいの列車が泊まるのが限界のように見受けられました。

 それじゃということで、新金谷まで切符を買って、ホームに入ると、とても懐かしい電車が。私が子供の頃にお伊勢参りに乗った近鉄特急が止まっています。前回来た時も見かけましたが、当時の塗装そのままで走っているのが、今となってはこの田舎の駅に妙に似合います。この車両は昭和40年製とのことで、この車両でさえも私より年上。「ドコドコ」というコンプレッサーの音がなんとも懐かしい。まあ、実際に近くで見ると、相当塗装がくたびれていて、剥がれたところを手塗りで塗りなおしていたり、シートも角が擦り切れていて、ちょっと痛々しい。経費が厳しいのはわかるんだけど、窓もたまには洗ってあげて・・・。沿線では、そろそろ梅の花か咲き始めていて、あちこちで写真を撮る人を見かけました。去年はこんなに人を見かけなかったような気がする。テレビとかで鉄道主体の取り上げ方をする番組がちょくちょく放送されたりしているせいだろうか。潜在的に鉄道を好きだという人は日本には結構いると思うが、一歩進んで鉄道を趣味にする人という人が確実に増えているという感じがしました。沿線と大井川鉄道、もしくは各地のローカル線に経済効果をもたらしてくれているといいんだけどな。

 新金谷の駅では、今日の牽引機であるC56 44が準備をしていました。この機関車はタイから逆輸入されて、奇跡の帰国を果たした機関車だ。以前はタイで使われていたときのけたたましい塗色のままだったが、いつのまにか塗装も本来の黒一色になっていて、金一色のプレートがとても美しかった。1時間早く到着する電車に乗ったので、あかたんを連れて見に行ってみると、ちょうど機関車が後ろに進んでいって見えないところまで行ってしまいました。お向かいに公園があって、そこから結構見物している人がいて、そこからだとよく見えるようなので、もっとあかたんに見せてあげたくて、そこの公園に行ってみることにしました。駅の反対側にある踏切をわたらないとならず、結構歩きましたが、程なく到着。あかたんは、というと、公園で滑り台を見つけて遊んでいる。子供というのは、興味の対象がころころ変わって、その瞬間に最も興味のあるものにまっしぐらに向かっていってしまうようだ。まあ、あとで家に帰ってから観るだろうと思って、そこからビデオを撮っておきました。しばらくすると機関車がまた前に進み始めた。どうやら客車の前に出て、連結するようだ。電気機関車が先頭に立って、SLが一番後ろに付いている状態。程なく列車が動き出し、金谷駅に向かって行きました。この電気機関車も釣り掛けモーターの重低音がいいよね。この機関車は、自社発注だそうだ。昔は木材運搬の需要があったのだろう。茶色一色だし、とても絵になるので、ぜひとも先頭に立って客車を引いて欲しいものだ。

 駅に戻ると、ホームが信じられないほどの人の山。ええ~っ! 去年始めて来たときはものすごくまったりしていたのに、どうなってるんだ? そういえば、観光バスから大量に人が降りてきていたような気がする。本当にこのところの鉄道ブームはちょっと過熱気味のような気がする。昨日のうちに指定席を予約しておいて正解だったようだ。指定席は1号車と書いてある。1号車は、と・・・。一番後ろじゃないか。激混みのホームの人をかき分け、ようやくホームの一番端に到着。まあ、ここはあかたんにビデオを撮っておいてあげるにはちょうど良い場所だ。

 今日の列車はなんと7両。最近あまり見かけることのない、長い編成だ。座席に着くと、割と余裕がある。一家族1ボックスという感じ。どうやら、団体さんとは完全に車両で分けているようだ。観光バスの団体さんは既に出来上がっていたりして、一緒の車両になると閉口することが結構あるが、少なくともうちの乗った車両は良い感じ。座席にある程度余裕を持たせて席を指定する心遣いがいいよね。(´Д`) 大井川鉄道は、座席指定の電話の応対も、今朝の駅員さんの応対も、とても良い感じです。今朝の駅員さんも、「電車を待たせてありますので、車内でどうぞ」なんて、本当にお客さんをお迎えするという気持ちがないと出ない言葉だと思います。

 列車はガタゴトと大井川に沿って山を進んでいきます。終点まで1時間ちょっとぐらいなので、車内販売のお弁当を買って食べるとちょうど良いぐらいの時間です。結構豪華なお弁当で、値段も良かったですが、これぐらいのペースで進む列車が一番駅弁には似合うと思います。昔の割とのんびり走る急行列車を思い出しました。165系とか、12系客車の列車は、窓を開けると駅弁売りのおじさんがやってきて、お弁当と揉み出しお茶を売ってくれたよね。窓を開けると吹きこんでくる風も心地良くて、今となってはものすごく贅沢な時間を過ごしたんだな、と思います。そんな時間をもう少し感じていたい、と思わせる列車なのですが、程なく終点に到着してしまいます。

 終点の千頭駅では、40分程度機関車をそのまま止めるそうです。今日はもう一本団体貸切の列車があった関係で、お向かいのホームにもSLが止まっています。結構SLの前は記念写真のお客さんで混んでいるので、もうひとつの列車を先頭まで見に行って、ちょっと時間調整。この時間って、ただ止めているだけではなく、給水、給炭作業を行ったり、いろいろやる作業があるみたい。しばらくして戻ってくると、だいぶ記念写真の人だかりも解消していました。先ほどSLの運転席にお客さんが入っているのを見たので、運転手さんに乗せてくれますか、と聞いてみると、快くどうぞ、とのこと。ボイラーの中が赤く燃えていて、結構暑い。運転席にもどうぞ、とおっしゃってくれたので、あかたんを運転席に乗せてあげて、カメラで写真をとってあげると、いままでに見たことのないようないい笑顔! 本当にうれしかったんだなあ。乗せてあげて本当によかったと思いました。

 そのあとは、ちょっと駅の売店で時間を調整して、折り返しの列車が発車するところをあかたんにみせてあげることにしました。フェンスのすぐ向こうに機関車が止まっているところまで連れてきてあげると、また楽しそうな顔。さらにちょっと先にバスの駐車場があって、そこがSL発車シーンの特定席。機関車を先頭に付け直す作業を行っていたので、転車台を使うかと思っていたのですが、この転車台はもう使えないのかな? 機関車を前後逆さまにして連結していました。ちょっと残念。

 千頭駅は周りを山に囲まれていて、ちょっと盆地のようになっています。実はこの地形がこの駅をすごく魅力的なものにしています。なんといっても綺麗に汽笛が響く、響く。周りの山に汽笛がこだまして、いつまでも響き渡ります。ちょっとここまで綺麗に汽笛が響く駅ってあんまりないんじゃないかな。

 今回は天気にも恵まれ、家族みんなでSLに温泉を楽しむことができました。あかたんもずいぶんしっかりしたので、今回は旅館の温泉だけでなく、線路から見える川根温泉ふれあいの泉にも行ってみました。ここの温泉はちょっと茶色のお湯で、かけ流し。温泉に入りながらSLを見送るってのもいいですね。ここは施設の中に入って食事をするだけなら入場料もかからないそうです。鉄していると、時間に余裕がなくて、なかなか温泉を楽しんだり、食事を楽しんだりってのができないことが多いです。大井川鉄道は列車の本数も多くて、毎日SLも走っていて、沿線にこんな施設もあって、鉄な人でも十分楽しめそうなところが本当にいいよね。

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今回の牽引機 C56 44号機

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運転台 とても綺麗に磨かれていました。

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客車から立ち上るスチームがいいよね。(・∀・)