ジュゼッペ・アンダローロピアノリサイタル。

 8月25日の夜は月曜日でしたが、場所と演目、値段に惹かれてピアノリサイタルに行ってきました。

 場所は杜のホール橋本、うちから車だと10分程度で着きます。それほど大きなホールではなく、オケがくることはあまりありませんが、よく寄席などが開かれています。今回の座席は全席3000円、7割程度だったでしょうか。私の座席は前から2列目、真ん中よりちょっと右よりという最高のピアノ席でした。やっぱりピアノの時って、同じ値段の席でも場所によってものすごく満足度を左右されてしまいます。

 今回のリサイタルはジュゼッペ・アンダローロという27歳のまだ大学院生のイタリア人。でも、コンクールの実績が結構あって、日本にも何度か来たことがあるという売り出し中のピアニストです。

 今回の演目

 ・モーツアルト ロンドニ長調 K.485

 ・シューマン 幻想小曲集 op.12

 ・ラフマニノフ 10の前奏曲 op.23より 第2番、第4番、第5番

 ・リスト ハンガリー狂詩曲 第2番

 

 ジュゼッペ・アンダローロというピアニストは今回初めて知ったのですが、すごく控えめな青年という感じです。チラシで見たときは、結構ビジュアル系な感じがしたのですが、もっと普通な感じです。今回は上下ともライトな感じの黒の演奏ウェア?最近のイタリアンカジュアル?まだブーニン先生のような威厳がある感じではないので、まあ、この格好が演奏しやすいのでしょう。

 さて、今回の感想としては、前半の印象がほとんど残らないほど後半の内容がすごかったです。テクニックもさることながら、その選曲は観客に強烈な印象を与えました。もう、観客のテンションがどんどん上がって、「楽しい」という気持ちが全体に広がっていくのがわかる感じ。ハンガリー狂詩曲というのは、ハンガリーの民族舞踊をモチーフにした曲なのだと思いますが、本当に面白い曲ですね。初めて聞いたのですが、テーマがしっかりした曲だけに「超絶」を上回る面白さがあります。ラフマニノフの前奏曲は一つ一つの曲にはもともと規則性があるわけではないのですが、3部作の組曲のような組み合わせで演奏していて、前奏曲らしからぬ完成度の高い内容に仕上がっていました。

 ラフマニノフとリストはいずれもその「超絶的」な技術を要求する内容がとかく強調されがちですが、同時に二人ともロマン派時代の代表的なピアニストなので、その本質は「繊細さ、美しさ」というところにあると思います。今回の選曲はいずれもその要求を満たす内容となっていて、彼の若さゆえの攻めの姿勢とともに、彼が本当にこの時代の曲を好きなんだという気持ちが伝わってくる内容になっていたとおもいます。なにしろ、こんなに「楽しい」が伝わってくるリサイタルは久しぶりで、すっかり私は彼のファンになってしまいました。今の彼の攻めの姿勢が今回の「楽しさ」につながったのだと思うので、この「彼らしさ」を大事にしていってほしいなぁ、と思っています。

 また日本に来てくれるといいな。でも、本当にすごい演奏だったので、彼が日本に来るときは、もう3000円では彼の演奏は聴けなそうな気がしますね。