無力。

 先週の奥会津の豪雨では、過去に記録がないほどのひどい被害が発生した。

 訪れるたびにいつも穏やかな顔で私を迎えてくれた只見川の流れ。その流れが豹変することを誰が想像しただろうか。 亡くなった方も、家を流された方もいる。

 なのに、自分には何も出来ない。ただ、呆然と、テレビで流れる映像を、現実のものと捉えられずにいる。お世話になった奥会津の人たち。見ず知らずの私にお茶を入れてくれたおばあちゃん。目がほとんど見えないのに、私に写真を取らせてくれて、その上訪れるたびに野菜をお土産に持たせてくれたおばあちゃん。いつも行くたびに声を掛けてくれる農家のおじいさん。撮影地で「電車がくるの?どうしてわかるの?」と寄ってきた、人懐っこい男の子。お母さんと一緒に只見線を毎日見に来る2歳くらいのあかちゃん。そして、幾度と見送った、只見線のテールライト・・・。そんなシーンがフラッシュバックのように、頭の中を流れては消えていく・・・。

 本当のことなんだろうか・・・。 すべて夢のなかの出来事なんじゃないだろうか・・・。

 一週間経って、ちょっと冷静に物事を考えられるようになった。すべてが変わってしまったのかもしれない。

 自分には、ただ祈ることしかできない。奥会津の被災した方々の生活が一日も早くもとどおりに戻ることを、そして、また只見線の列車が当たり前のようにやってくることを・・・。